ChatGPTを使えば、
キャリアの答えも見えてくる。
そんな期待を、一度は持った人も多いと思います。
実際、質問を投げると、
それらしい答えはすぐに返ってきます。
だからこそ、「使い方が悪いのでは」と、
自分を責めてしまうこともあります。
ですが、ここで立ち止まって考えたいのは、
そもそもChatGPTは、
キャリアの答えを出すための道具なのか、という点です。
この記事では、
ChatGPTを否定することはしません。
ただし、期待する役割を一度下ろし、
「考える補助」に限って使う理由を整理します。
AIを使いこなすことが目的ではありません。
自分の判断を取り戻すために、
どこまで任せ、どこから任せないかを考えるための記事です。
ChatGPTにキャリアの答えを求めると、なぜズレるのか
ChatGPTに質問すると、
筋の通った文章や、
一見もっともらしい提案が返ってきます。
それでも読み終えたあと、
「何か違う」「決めきれない」
と感じることが多いはずです。
このズレは、
使い方が悪いからではありません。
ChatGPTの仕組みそのものに理由があります。
ChatGPTは、
多くの事例や文章の傾向から、
平均的に“それらしく見える答え”を組み立てます。
一方で、あなた固有の事情や、
引き受けられるリスク、
覚悟の度合いまでは持てません。
キャリアの判断には、
数字では測れない制約や、
「失敗しても受け入れられるか」という感情が含まれます。
そこは、AIが代わりに決められる領域ではありません。
だからこそ、
ChatGPTに答えを求めるほど、
「正しそうだが決められない」状態が生まれます。
ChatGPTが悪いわけでも、
あなたが間違っているわけでもない、という点です。
単に、役割が違うだけです。
AIに向いていない問いがある
ChatGPTは便利ですが、
すべての問いに向いているわけではありません。
特に、キャリアに関する問いの中には、
AIの役割外となるものがあります。
例えば、
「どの選択をすれば後悔しないか」
「今の仕事を続けるべきか辞めるべきか」
といった問いです。
これらは、
情報を集めれば解ける問題ではありません。
選んだ結果を、
自分で引き受けられるかどうかが含まれるからです。
また、
「今感じている違和感の正体は何か」
といった感情に近い問いも、
AIには判断できません。
AIは、
言葉として表に出たものを扱うのは得意です。
一方で、
言葉になる前の迷いや覚悟を、
代わりに決めることはできません。
ここで大切なのは、
AIに向いていない問いがあると理解することです。
それはAIの欠点ではなく、
人が担うべき領域が残っている、というだけの話です。
逆に、AIが役に立つのは「考えを分ける」場面
AIに向いていない問いがある一方で、
役に立つ場面も、もちろんあります。
それは、
答えを決める場面ではなく、
考えを分ける場面です。
例えば、
選択肢が頭の中で混ざっているとき。
何が事実で、何が感情なのか、
自分でも区別がつかなくなっているときです。
こうした場面では、
ChatGPTに投げた言葉をきっかけに、
思考を分解することができます。
「今の不安を書き出してみる」
「メリットとデメリットを分けてみる」
「自分の前提条件を整理する」
といった作業は、AIが得意とする領域です。
ここで重要なのは、
AIの返答を正解として受け取らないことです。
返ってきた文章は、
考えるための材料のひとつに過ぎません。
AIを使うことで、
考える手間が減るのではなく、
考える視点が増える。
その程度の距離感が、ちょうどいい使い方です。
プロンプトは「質問」ではなく「思考の下書き」
ChatGPTを使っていると、
「どう聞けば正解が返ってくるか」
を考え始めてしまうことがあります。
ですが、キャリア整理においては、
プロンプトを工夫しすぎる必要はありません。
むしろ、整っていない言葉のまま投げたほうが、
思考の材料になります。
この段階でのプロンプトは、
質問というより、
自分の考えを書き出すための下書きです。
「今の仕事に不満はないけど不安がある」
「副業が気になるが、時間が取れる気がしない」
といった曖昧な文章で構いません。
返ってきた答えに納得できなくても、
それは失敗ではありません。
「どこが違うと感じたか」を考えることで、
自分の判断軸が浮かび上がります。
完璧なプロンプトを作ろうとすると、
いつの間にか、
AIに答えを預ける姿勢になってしまいます。
プロンプトは、
答えを引き出すための鍵ではなく、
自分の考えを外に出すためのメモ。
それくらいの位置づけで十分です。
使わない判断も、立派なAI活用
AIを使い始めると、
「使い続けなければならない」
という感覚に引っ張られることがあります。
ですが、
キャリアを考える場面では、
あえて使わない判断が必要なこともあります。
例えば、
気持ちが整理できていないとき。
答えを急いでいると感じるとき。
そういう場面では、
AIの返答がノイズになることもあります。
今は紙に書くほうがいい。
今は何も入力しないほうがいい。
そう判断できること自体が、
AIを「使いこなしている」状態です。
AI活用とは、
使う回数を増やすことではありません。
必要な場面を見極め、
距離を取れることも含みます。
ChatGPTは、
あなたの代わりに決める存在ではありません。
考える場所を一つ増やすための、
補助的な道具に過ぎません。
まとめ｜ChatGPTは「考える場所」を増やす道具
ChatGPTは、
キャリアの答えを出す装置ではありません。
判断を任せるほど、
かえって迷いが増えることもあります。
一方で、
考えを分けたり、
整理する補助として使うなら、
十分に価値があります。
大切なのは、
どう使うかより、
どこまで任せないかを決めることです。
次に考えるべきなのは、
AIを使って何をするかではなく、
自分がどんな選択肢を持てるか、という点です。
